アーティストのNatsuki Hanyu氏は、2020年にWe Are All Unique=みんなちがってみんないいプロジェクトを立ち上げ、アフリカ・ケニアの女の子たちのための教育普及、エンパワーメント活動、メンタルケアなどを行っているNGO、NIGEE(Nyanza Initiative for Girls’ Education and Empowerment)を、作品売上の2割を寄附する方法で支援しています。
Natsuki Hanyu氏がプロジェクトのために用意した作品は、人種も民族性も異なる女の子たちのポートレートと、それを彩る1点1点ハンドペイントされたフレームです。
2001年から継続的にダルニー奨学金への寄附によって東南アジアの子どもたちの就学支援をしてきた私たちラーソン・ジュールは、縁あって彼女のプロジェクトを知ってその主旨に賛同し、創作用の額縁を提供することでプロジェクトに協力させてもらうことにしました。
2021年1月27日から31日まで上野松坂屋で開催されたエシカルライフフェアに参加中のNatsuki Hanyu氏を訪ね、プロジェクトや作品に対する思いを詳しく伺ってきました。
LJN:ウェブサイトを拝見すると、We Are All UniqueプロジェクトはNatsuki Hanyuさんのほんの一部で、多岐に渡る活動をされていることがわかります。元々はファッションとテキスタイルを専門にされているのですよね?
NH:はい、そうです。実は現在もロンドンのRoyal College of Artという大学院に在籍してテキスタイル関連の専攻をしているのですが、新型ウイルス感染症拡大の影響で昨年3月に日本に帰国しました。このままリモートで卒業…ということになりそうです。ひとりのアーティストとして専門分野に限定するのではなく、そのときに表現したいものを、それに最適なメディアを使って自由に表現したいと思っています。
LJN:額縁を作品の一部としてペイントされる作家さんはあまり多くないと思うのですが、額縁をペイントしようと思われたきっかけを教えてください。
NH:どのような作品でも、作品本体だけでなく、それを配置する空間も含めたプレゼンテーション、例えばファッション作品であれば誰に着てもらってどこで撮影するか、を重視しています。ですから絵画作品の場合には額縁は必須と考えていますが、自分の作品にぴったりなものが既存品の中に見つけられなかったので、自分でペイントすることにしたのです。
LJN:美術館で歴史的な絵画作品を鑑賞していると、作品のために意匠を凝らして誂えられたフレームで額装されていたり、誂えたフレームにアーティストが更にモチーフを加えたものもありますよね。Natsuki Hanyuさんのように作品表現の一部としてフレームを利用するアーティストの方が増えたら、表現の幅も広がるでしょうし、作品に対するフレームの役割も拡張されて、より楽しさが広がる気がします。
LJN:プロジェクトを立ち上げられた経緯についてお聞かせください。非常にたくさんの作品が用意されていますが、全てプロジェクトのために新しく用意されたものなのですか?
NH:プロジェクトは昨年スタートですが、絵と額は3年くらい前から描きためたものです。絵画作品は毎日その日の気分や食べたものなどを日記のように記録するつもりで描いてきました。プロジェクトを計画したときに、主旨にぴったりと考えて活用することに決めました。額は元々は全ての絵にはつけていなかったのですが、プロジェクト立ち上げに向けてフレーム作品の点数は増やしました。
LJN:なぜ、ケニアのNGO支援なのでしょう?どのようなご縁があったのですか?
NH:プロジェクトのパートナーである友人のChiharu Sasakiが5年程前に主導したクラウドファンディングのプロジェクトに、寄附する形で参加したことがきっかけです。彼女はケニアに留学していたことがあって、留学先ではNIGEEでボランティアをしていました。私は1ヶ月分のアルバイト代を寄附したのですが、最終的にこの活動で12人の子どもたちの就学支援ができたと知り、感動しました。当時はChiharuさんの活動に寄付で参加する形でしたが、We Are All Uniqueのほうは私が主導していて、今はロンドンで働いているChiharuさんにも手伝ってもらっています。ケニアのテキスタイルの色使いに興味を持っていたことに、縁を感じてもいます。
コロナ禍の影響で私は今日本に住んでいますし、自由に海外に行くこともできませんが、活動を通じてロンドンにいるChiharuさん、そしてケニアの皆さんとつながれることに、楽しさと嬉しさも感じています。
LJN:今回の作品についてもお話を伺いたいのですが、エシカルライフフェアのために準備されたA3サイズの作品は、どのくらいの期間で制作されたのですか?制作の様子を紹介された動画では早回しでみるみるうちにできあがっていきましたが、実際にはかなり時間がかかったのでは。
NH:乾燥に要する時間もあるので、全部で3週間くらいかかりました。私の絵は水彩をごくごく薄く何度も重ねていくので、時間がかかります。額縁のほうはアクリル絵の具の重なりによる厚みで質感をつけているので、やはり時間は長く必要です。
LJN:会場で絵画のライブペインティングの様子を拝見して、改めて膨大な手間と時間をかけられたものだということがよくわかりました。確かに薄く重ねられた色彩でしか得られない表現になっていますね。どの作品もお洋服が凝っているのは、やはりテキスタイルを専門分野とされている方ならではと思います。
NH:はい。元々はファッションの勉強をしていたのですが、重要な素材であるテキスタイルに惹かれてテキスタイルを専攻することにしました。子どものころから様々な民族衣装を見ることが大好きで、絵画作品は脳内にストックされた民族衣装をアウトプットするように描いています。描きながら「この女の子はこの民族衣装を着せよう」とイメージが膨らんでいきます。
LJN:ひとりひとりが異なる存在であることを楽しみ尊重しよう、というプロジェクトのテーマに本当にぴったりですね。
LJN:最後に今後の活動予定について教えてください。
NH:現在イベント活動はなかなか難しいのですが、来年頭に大阪で予定されているものにWe Are All Uniqueとして参加する予定があります。学校では最終学年なので、そちらの制作も進めなければなりません。せっかく日本にいるので、和紙原料で作られたマテリアルを使った衣装でのパフォーマンスを計画中です。
LJN:全国の額縁店さんと協力してWe Are All Uniqueの巡回展などもできたらすてきですね。今後私共のイベントなどでも活動や作品を紹介することができれば嬉しいです。
Natsuki Hanyu氏の作品は弊社公式ECサイトと、Natsuki Hanyu氏が運営するWAAUオンラインショップ、今回のエシカルライフフェアなどのイベント会場で購入することができ、どこで購入される場合も売上の20%がNatsuki Hanyu氏よりNIGEEに寄附され、アフリカ・ケニアの女の子たちの支援に活用されます。
前回のNEWSはこちら:
アーティストNatsuki HanyuさんのWAAUプロジェクトを支援
1月27日~31日開催のエシカルライフフェアにアーティストNatsuki Hanyuさんが参加