スカーフの額装

フェラガモ製のシルクスカーフ(約90㎝角)を縫い付けによる固定方法で額装するプロセスをご紹介します。額装用にスカーフを固定する方法は様々ありますが、ここではスカーフへのダメージを最小限に抑えつつ、比較的簡単に額から取り外して再度スカーフとして使えることを目的として額装しました。シルクスカーフの特徴のひとつである手作業でかがり縫いされた縁を見せるデザインにしています。

フレームは細身の14-3023を選択しましたが、サイズが大きいためカシメつの字で補強しました。

額装方法

1. スカーフを傷めないよう低温設定のスチームアイロンで目立つ皺を伸ばします。
(作業所要時間:約30分)

2. スカーフよりも一回り大きいコットン100%の黒い布を用意し、スカーフをその中央に置いて仮留めし、シルク100%の細い黒糸で布目を揃えながらスカーフと綿布を縫い留めます。

テグスや、混紡糸など強すぎる糸を使って縫い付けると、額装後などに何かの衝撃が加わったときにスカーフが破れてしまう恐れがあるため、スカーフと同素材の細い糸を使うことが重要です。スカーフの繊維を傷めぬよう、クロスステッチ用など先端の丸くなった針を使用します。

縫い目が目立たないよう、スカーフの縁かがりの縫い目に合わせるようにして、ステッチ幅は2.5cm以下にします。(作業所要時間:約2時間)

3. スカーフよりも若干大きめで、綿布よりは小さなボードを用意します。シルクなど蛋白質系繊維や一部の染料はアルカリ性の素材に触れることで損傷する場合があります。今回はシルクスカーフの裏に綿布を縫い留めたのでスカーフはボードに直接触れませんが、念のためアルカリ緩衝材を添加しない中性のコットン100%の紙でできたボードを使用しました。

綿布をボードの上に重ねて布をボードの裏側に巻き込み、布貼り用の粘着力の強いテープ(ステッチテープ)で綿布をボードの裏側に貼り込みます。

スカーフの縁ができるだけ真っ直ぐになるように引き加減を調節しながら貼りますが、あまり引っ張り過ぎるとスカーフが傷む原因になるので注意します。(作業所要時間:約30分)

4. スカーフに限らず、作品はガラス・アクリルに直接触れることでダメージの発生するリスクが高くなるため、マットボードやスペーサーなどで作品とガラス・アクリルの間に3mm程度の空間を作ることが重要です。ここでは5mm厚のフォームボードに布を巻いたものをスカーフの支持体のボードの上に重ねました。

5. 繊維自体も染料も紫外線に弱い素材です。布が脆くなることや色褪せを防ぐために、有害紫外線を97%以上遮断する保存額装用UVカットガラス・アクリルを使用することが推奨されます。また、今回はスカーフもボードも黒や濃い色でまとめたため、映り込みで鏡面のようになるのを避けるために低反射で99%の有害紫外線をカットするオプティアム・ミュージアム・アクリルを使用しました。

参考文献: PPFA Guidelines for Framing “Textiles and Needlework”